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エヴァ(旧劇場版)とジョジョ6部(ストーンオーシャン)
最近、ふとしたきっかけで、(今更ながら)旧劇場版エヴァのあらすじを知った。
それで、自分の好きな小説が、実は一部、エヴァの筋を下敷きにしていることを(今更)知って驚愕した。
おそらく作者(円城塔さんの方)も隠す意図はないと思うので作品名を言ってしまうが、『屍者の帝国』である。
作品愛が感じられるなぞり方で良いなぁ。*1
アダムのあの行動、碇ゲンドウのオマージュだったんだ…
自分がなぜこんなにびっくりしているのか我ながら判然としないところもあるが、自己分析を試みてみるに、
①『屍者の帝国』が自分の偏愛する作品である、
②純粋に、ゲンドウ/アダムの行動の動機が美しい*2(賛否両論あるのかもしれないが)、
という2つに加え、
③エヴァが世代的にモロに被っており(10代中盤の頃にオンエアされ社会現象化)、偶然の作用しだいでは*3自分の人格形成に大きな影響を与えていてもおかしくない作品だった
という要素が大きいのかも、と思う。
これ、ジョジョ6部の筋、というか終わり方を、30過ぎてから知った時の驚き/要素に似ている。
(以下、場合によってはネタバレになりますので、お嫌な方はご注意ください。)
同種の終わり方*4をしている後発作品いくつかが好きだったので、「これ、ジョジョと同じだったのか!」という驚きがあった。*5
この終わり方、心を抉るよな…
…というようなことを思いました。
特にオチはありません。
「自分が見落としていた(名前だけ知ってた)作品の内容を知って、それが何らかの意味で自分の過去の体験とリンクしててびっくりした」
みたいなこと、皆さまはありますかね?
*
小説
そうそう。上記と若干似ているが、
「先行作品の内容中コアな部分と、それをオマージュした後発作品があることは知ってたけど、その先行作品を読んだこと自体はなかった」
みたいなケースの当該先行作品を、先日、読んでみた。
もちろん、
・著作権は表現を保護するものであってアイデア/コンセプト自体を保護するものではない、ということは(職業柄)知っているし、
・だからこそ先述したような大好きな作品が生まれているわけだから、このルール自体に異議を唱えるものでもないけれど、
それも最低限、先行作品に対するリスペクトあってこそだよね。
推理小説のネタをまんまパクった上に開き直ったらいかんでしょ。
どの作品のこととは言いませんけど。*6
職業・法律を離れたいち個人としての(率直な)心情ですけど。*7
で、上記作品については、
"松本清張以後の推理小説界におけるとある雰囲気に勇気をもって異議申立てを行い、その後の大きな流れの嚆矢となった"
って意味でも、敬意を払われて然るべきだよね。
前から気になって作品ではあったけど、今回、読めて良かったです。
*
流れのまま、ここ1ヶ月くらいで接した作品の記録を。
小説は、『占星術殺人事件』に加えて、これ↓。
久しぶりに西澤先生の作品を。
今回のは、西澤先生によくある、「内容的に繋がりがある短編集」系。
いや、こんな設定、よく思いつくよな 笑
軽妙さの奥に社会の裂け目みたいなものがパックリ不気味に口を開けている…みたいな温度感。そうそう、今回はこういうの読みたかったのよ僕は。
この中だと…『まちがえられなかった男』か『リアル・ドール』が好きかなぁ。
後者はちょっとアレな作品だけど、「おほっ、今回はそういうオチで来ましたか!」という仕掛けとラストが楽しい。
笑いごとなのかどうかは知らん。
マンガ(単行本)
今回、集めてるマンガの発売日が集中した感じである。
(以下、前回の記録漏れ分も含めて。)
23巻。
羂索、人物像(過去)の描写がないから内面が読めなさ過ぎて、話(説明)が頭を上滑りしちゃうんだよな。
しかしお前は絶許である。
僕、九十九さんのあの感じ好きだったのに…情の厚さと達観の仕方のバランスみたいのがタイプだったのに…
漢気のある気のいい姉さんでカッコよかったのに。
戦い方もガチンコ肉弾戦系でカッコよかったのに…
24巻
どんどん話に救いがなくなっていく。
そしてここでまさかの宿儺が××。無惨様的に超然とした人間観。
石流さん一瞬すぎ。強さのインフレ化が起きつつある。
それとこれ、五条先生どうなるの?いつかは復活するんだろうけど(そしてそれをとっても楽しみにしているのだけど)、そこまでの道筋が全く見通しつかなくなったな…。
え、何これ超ピンチじゃん。どうなっちゃうの??
今回のヨルさんは恥じらい顔がいまいち可愛くなかったな。70点。
奥さんへの恐怖をバスジャックのトラウマにすり替える自己欺瞞、リアルすぎて好き。
怖いよねそれは。
ちょっと話が拡散しがちかなぁ…5人の悪党のエグさ、じいちゃんの底知れなさ、俊の内面の苛烈さが1部の魅力だったから、テイストがガラッと変わった2部には未だ馴染めないところがある。
麗央ちゃん、これで出番は終わりになっちゃうのかしら。過去体験にはいまいち感情移入できなかったけど、もうちょっと活躍を見てみたい気もする。
××ちゃんのそっくりさんが出てきたのはびっくりした。あの死に方は相当えげつなかったからなぁ…その前に円にも被害に遭ってるし。
続きが読みたいような、読みたくないような…。
今回はいろんな出来事が矢継ぎ早に起こる巻だったな。内面描写は鳴りを潜めた感がある。李白は有能だなぁ。
他方、番外編ぽく挟まってる怪談回が不気味で印象に残った。子翠の話は何かの伏線になるんだろうか。
カマキリ怖い。
それと、蛙の件…猫猫よ。今回のそれは真摯な謝罪に値すると思うぞ。マジで謝れ。
アラタ、お前は本当にいい男だな…。
ところで、映画化決定、だそうである。
びっくり。
以前も似たようなこと書いたけど、巻を追うごとにどんどん好きになってきてる。キャストはバーンと豪華に頼むぜ。
本巻で、『結婚』の行方は決着した。納得の落としどころと言うしかない。
一方では桜井や周防のそれみたいな結婚観もあり、僕個人としては正直、周防のセリフ*8
「心底ほっとした。」
「『何かを永遠に継続しろって契約』こそが、『地獄』なんだ…って。」
には心底、共感した。でも、それでも、
「ボク、見通しを立てなくするために結婚するんだって思ってたよ」
「ボクは、今 すごく―『自由』!」
(真珠)とか*9
「俺たちの幸せが欲しかった。生まれて初めてそんなこと思ったんす。」
「俺の結婚は、悪くなかったっす。」
(アラタ)とかってセリフ(11巻p189-192)は沁みた。スッと違和感なく入ってきた。
そうそう。それと、アラタが後者のセリフというか、物語を共有する相手としては、サイバンチョさんほどふさわしいキャラはいないよね。*10
本作品は、裁判官を訳の分からない腹黒キャラとして扱うことをせず、一個の人格の持ち主として立体化して描いた、少し珍しいフィクションだという気がする。
他方、全体的な筋に関しても、凄えな、の一言に尽きる。あるいは、やっぱり凄えな、かな。乃木坂太郎さん。
「ボクと一緒に暮らせる?―じゃあ、出るね。」
から始まったサイコで怪奇的な物語が、見事に伏線回収して、現実感のある話として着地した。*11
次集(2024年1月頃発売予定)完結、だそうである。
「だってあの時聞いたんだから。ボクと同類の、獣の叫びをさ…」
と述解した真珠*12が、遂に、自身の獣の叫びを明らかにする。
真珠…死にたいと思ってた時すら気づかずにいた自分の本心に向き合わされて、完全に内閉地獄に落ちたからな。
感情移入できるキャラが揃った作品にせよ、安易なハッピーエンドはお断りである。ただ、乃木坂太郎さんの場合、それは全く心配していない。
だから、何とか、救いのあるラストにしてほしい…と思う。
新書+α
今回は新書はコレ↑だけ。
職業柄、精神疾患に関しては「よく知りません」では済まされない部分もあるし、何が先天的で何が後天的形質なのかとかは一個人としても興味があるフィールドなので、買ってみた。
自分自身鬱になった経験がある身としては、他人事ではないし。
で、そういう動機で読むには話が先端的すぎた感もあるが、興味深く読めた。
ただ、これも再読対象かな。せっかく読んだのだし、大筋だけでいいから、多少は知識を頭の中に残したい。
これ、同じ選書シリーズの一冊『英語の文型』を以前読んで「いいな!」と思ったこともあって、今回、もう一冊手を伸ばしてみた感じ。
地味な見た目に反して(?)、分かりやすいんだよね。各章の最後で「この章の要点」をまとめてくれてるのも親切。
構成も工夫されていて、第一部で英語史を通観し、それを踏まえ、第二部で現代英語のいくつかの特徴を取り上げ、そこに至る歴史的経緯を深掘りして紹介する形式。
内容的にも、基本的なことも漏れなく説明してくれつつ、具体例も豊富だから、飽きずに読める。
まぁ、敢えて欲を言えば、単語レベルの知識(起源、意味変化、発音変化)だけじゃなく、文法レベルの蘊蓄も欲しかったかな。でもまあ十分満足。
同じく英語ネタ。
そうそう。前回の日記でPCの故障に触れたけど、修理の間スマホ中心の生活をしてた副作用で、YouTube動画を見る癖が付いてしまった。良くも悪くも。
で、KERさんを見つけてしまった。クッソ面白い。
お三方の掛け合いが和気藹々としてるとことか、常識豊かな範囲内でふざけまくってるところなんかも、無防備な心理状態で見れるから良いね。
堪能してます。そういうわけで、本書も買ってみた次第。
日本人が言いがちな英語表現のネイティブへの印象を扱った書籍は昔も買ったり読んだりしたことあるけど、本書は実は、それらと比べて情報量が多いところに特徴があると思う。適切な代替表現なんかも複数挙げられてるし、例文も豊富だし。
それなのに、本文会話形式だから読みやすいし。面白いし。
ハードカバーだけど1300円だしね。これは、お買い得な一冊だと思う。
音楽
数年前にハマった曲に再びハマり、エンドレスで聞いている。
凛として時雨『mib126』、という曲である。
動画に関してはオフィシャルなやつはなさそうなので、アップロードは自粛しておきます。お手数ですが、気になる方は適宜検索してみてください。
代わりと言ってはなんですが、収録されているアルバムがこちら↑。最後を飾るのがこの『mib126』。
途中、曲調が一気に変化して暴徒化する感じ。そこから最後までの疾走感が凄い。
僕の中で、個人的なイベントのうち、試合前とか試験前みたいなタイミングで聞くならこの曲を措いて他にはない。
脳汁出まくりの一曲である。
そもそもタイトルの読み方すら定説がない。僕自身は勝手に「エムアイビーいちにいろく」、と読んでいる。
当然、込められた意味も不明。ただ、ネット上の意見なども参考にしつつ、『mib』は『ミ・フラット』、『126』は『みよこ(345)不在』、という意味かな、と推測している。
音感がある人間ではないので、この曲が本当にミフラットの曲なのかどうかは僕は知らん。
他方、『345不在』の方は聞けばわかる。時雨ダブルボーカルの片翼、みよこさんの声が入っていない。
時雨の曲のボーカルでは通常、TKが叫んだりして暴れる合間にみよこさんのクールな高音が入り、全体として均衡が採れている。
mib126では、その抑制役のボーカルが不在なわけなので、つまりは均衡が崩れている。そこがそのまま、精神の均衡が崩れたかのような不安定さに満ちた曲調とリンクし、増幅している。
ところで、みよこさんはボーカルのほかベースも担当しているわけだけど、mib126にも、ベース音源の方は(もちろん)入っている。ただ、ベースの音は、何というか、エグい。
途中の間奏部分、TKのギターと手を取り合って、精神の平衡の向こう側へ加速度つけて突撃している感すらある。*13
先程から『ボーカル』『間奏』という言葉を何気なく使ってはいるが、この曲の場合、歌詞がもはやイメージの羅列に近いので、楽器演奏こそが主旋律に近く、『ボーカル』はもはや呟きとしての『点』に過ぎない、という側面もある。
ただ、かといってボーカルが脇役に過ぎないわけでもない。
前半の静かな曲調の中では、呪文を唱えるかのようなTKの呟きが印象的な不気味さでもって浮き出ている。
他方の後半は、シャウトがとても効いている。時雨の代名詞とも言えるTKのシャウト。
特にこの曲は、聴くたんび毎回、
オレンジプラスミイィーーー
クレィジーダンスィーーーン
と叫びたくなる。
*1:さすが結婚式でコスプレするだけある。
*2:正確に言うと「行動のグロテスクさと動機の美しさとの落差が大きい」、だろうか。
*3:当時の僕には、「なんか東京で凝った設定のアニメが流行ってるらしい」程度の認識しかなく、ほぼ予備知識なしに友達と劇場版(物語のラストを見た記憶はないから、たぶん、『劇場版 シト新生』だったんだと思う。)を見に行ったくらいだった。分析本みたいなのも買ったが、物語の筋そっちのけで「死海文書って名前がカッケエな、何だそれ?」みたいな読み方に淫していた記憶である。
*4:(この注釈はモロにネタバレです、未読の方注意→)①主人公(以下「X」)が、何らかの意味で『世界』を救う、②ただ、その『世界』はパラレルワールドのひとつである、③最後に、元の『世界』とは別のパラレルワールドに生き残った人たち(主人公の仲間(以下「Y」)とか)が描写される、④その『世界』では、YしかXのことを覚えていなかったり、あるいは、Yも含めて誰も、自分が今存在しているのがXのお陰だ、ということを知らなかったりする(当該作品の設定次第)、それがなんとも切ないというか、やりきれない読後感を読者に残す…みたいなまとめ方になるだろうか。
*5:こっちに関してはオマージュだという確信はない。というか、そもそもこの種の終わり方をしたのがジョジョが初めてなのか、それとも更なる先行作品があるのかもよく知らない(僕が知る範囲ではジョジョ6部が最初、というだけ)。SF界では昔から知られた手法だったりするのだろうか?
*6:この件、結局、謝罪はされずじまいだよな?もし万が一、私が不勉強で知らないだけならごめんなさい。
*7:書いておいてなんだけど、こう、「法律で特に規制されても違法とされてもいない行為に関して消極的な意見を述べること」について、個人的に、若干の躊躇があるな。法規制を離れたフワッとした倫理に基づく同調圧力みたいなものに対して警戒感が強いからだけど。まぁでもリスペクトを欠いたパクリに関しては、ダメだろ、って思う。
*8:10巻p114-115
*9:7巻p34-36
*10:まさかここで托卵のエピソードが活きてくるとは。
*11:回を追うごとに怪奇色を増してきた『幽麗塔』とは、ある意味、真逆かな。
*12:10巻p109
*13:本文では触れませんでしたが、(TKのみならず345までも"狂"側に加担してる分、)この曲が曲としての体裁を守れているのはひとえに、ピエール中野さん(ドラム)のおかげであると思う。