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【資格試験】ようやく経験の棚卸しはじめ【中小企業診断士試験②総論】

(約14,000字)

 

 

前回の日記の冒頭でも触れましたが、この7月のはじめ、実務補習の一周目を終えました。
とても素敵なご縁に恵まれました。指導員の先生にも*1、診断先企業様にも、そして同じ班の仲間にも。
次は8月の下旬です。とってもとっても大変ですが、またがんばりたいと思います。

 

他方、僕は今、タキプロさんという診断士受験生支援団体にも所属して、ちょいちょい活動しています。
基本、東京で開催されるオフライン(リアル)の勉強会に顔を出していますが、その他、こないだはZoom撮影からのYouTubeデビューもしました笑
さらに、そのタキプロさんからご縁が繋がり、来月初旬には、診断士合格者同期が盛大*2に集まるオフ会にも顔を出せることになりました。

 

そういうわけでここのところ、頭の中の一角を常に診断士関係が占めています。
この勢いで、1月末に書いた診断士の記事の続きを書いておきたいと思います。
続きというかむしろ前提というか、今回は、「そもそも診断士試験とは?」みたいなお話です。

 

それにしても今年に入ってから、記事が他資格関連ばっかだな。

 

 

 


1.資格の位置付け

診断士っていう資格を設ける法律上の目的は、要約すれば、「中小企業の振興に寄与する」ために「中小企業者が…経営の診断及び経営に関する助言を受ける機会を確保する」こと、というまとめ方になりますかね。

中小企業支援法
1条(目的)
:この法律は、国、都道府県等及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業支援事業を計画的かつ効率的に推進するとともに、中小企業の経営の診断等の業務に従事する者の登録の制度及び中小企業の経営資源の確保を支援する事業に関する情報の提供等を行う者の認定の制度を設けること等により、中小企業の経営資源の確保を支援し、もつて中小企業の振興に寄与することを目的とする。
11条(中小企業の経営診断の業務に従事する者の登録)
1項経済産業大臣は、中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言(以下単に「経営診断」という。)を受ける機会を確保するため、登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する者であつて次の各号のいずれかに該当するものに関する事項を登録する。
 1号 次条第1項の試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める実務の経験その他の条件に適合する者
 2号 前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者で、経済産業省令で定めるもの
2項:前項の規定により登録すべき事項及びその登録の手続は、経済産業省令で定める。

 

「中小企業」診断士、という名前が付いていますが、試験の内容として「中小企業」のみを対象とした知識が問われる、というわけではないです(基本的には*3)。どんな企業様を支援する上でも役に立つ知識が問われますし、実際、近時は、大企業にお勤めの若い方の間でこの資格が人気だ、というふうにも聞いています。
なので、診断士は、日本版MBAと呼ばれることもあるそうです*4

ただ他方、じゃあ診断士協会*5が大企業さんの仕事を受けているかというと、そういうわけではないです。
独立診断士がコンサルする相手に制限があるわけではないけど、協会、すなわちオフィシャルな団体としては、あくまで法律上の資格設置目的に沿う形の活動をしている、と。そういう形です。

まぁ、そりゃそうです。


SNS上で、要旨、

資格を広めたいんなら、名称に「中小」ってわざわざ付けてるのはかえってダサいんじゃないの?

みたいな意見を見かけたことがありますが*6、しょうがないじゃんね、大元の法律がそうなってんだから。
そんなとこ気にせんでも受ける人は受けるよ。現にそうなってるし。試験の中身だって社会人誰しも知ってて損がない内容なんだから。…というのが私見です。

 

個人でやるコンサルの相手に制限があるわけではないという話。
というか、そもそも、診断士には、いわゆる独占業務はありません。
例えば弁護士であれば、弁護士しか扱えないとされている業務があり(「法律事件に関して…法律事務を取り扱」うこと*7)、仮にそれを弁護士以外の人がやると非弁行為として刑事罰の対象になります*8。しかし診断士の場合、そういう業務はありません。
なので、それでご飯を食べていこうとすれば、無資格のコンサルさんともフラットな立場で競争する必要があります。
ここに着目すると、資格を取る意味が希釈されている側面は否定し得ないかもしれないです。


まあ、ただ、『法律上の』参入障壁って『法的な』(=重ーいおもい)責任とワンセットですし、その『法的な』責任の周辺には『社会的』責任という広大で漠然としたグレー領域があるわけで。で、その中には、当該士業への誤解に端を発して勝手なイメージを背負わされている部分もちょいちょいあるわけで。
そういうしゃらくさい縛りがなくて、怪しげなコンサルも跋扈する業界中、ただ『国家資格』というネームバリューからくる信頼のみがある資格、というのも、それはそれで十分アリじゃん、という気もしますけどね、個人的には*9

 

 

閑話休題。診断士の資格の位置付けの話です。

 

 

ネーミングの話で言うなら、僕個人としては、どちらかというと「診断」の方がやや違和感を感じます。
今のご時世「診断」はないんじゃないの、上から目線だし、分析だけしてるわけでもないし、「支援士」とかの方が実態に合うんじゃないの*10、などと思っていました*11

 

で、例によって、今回この記事書くに当たっていろいろ調べてて初めて知ったんですが、診断士って、資格じたいの歴史はかなり古いんですね。なんと1948年に制度が発足したもので、当時は公務員内の資格だったらしいです。
「診断」ってネーミング、その時以来のものだそうです。なるほどね。
たしかに:

  • 当時は「お上」意識が断然強かったでしょうし、
  • 公務員が特定の一企業ばかりを『支援』するのもそれはそれで問題ですから、「診断」というネーミングにも、一定の納得感はあります。

 

当初はそもそも無試験の登録制度として始まったのが、時代が下って試験制度・養成制度が整備されました。
今の試験制度(のひな形)ができたのは平成12年のことで*12、このときに、公務員内資格から、広く一般向けの資格に転換したようです。

僕、これまでは、資格じたいもこのとき(平成12年あたり)にできた(歴史の浅い)もんだと誤解してました…。

 

 

以上(診断士資格の歴史)につき、いくつかのブログ記事等を参照しましたが、特にエアゾールさんの記事は包括的にまとめていただいていて、とても勉強になりました。
この場をもってお礼申し上げます。

 

 

2.試験の内容

1次と2次に分かれており、1次が短答、2次が論文+口述です。1次合格者だけが論文に進み、論文に合格した人だけ口述に進めます。

中小企業支援法
12条(中小企業の経営診断の業務に従事する者に係る試験)
1項経済産業大臣は、中小企業の経営診断の業務に従事する者の資質の向上を図るため、中小企業の経営診断に関する必要な知識についての試験を行う。
(2項ないし8項 略)
9項:前各項に定めるもののほか、第1項の試験及び指定試験機関に関し必要な事項は、経済産業省令で定める。

中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則
前文
:中小企業指導法の一部を改正する法律(平成12年法律第43号)の一部の施行に伴い、並びに中小企業支援法(昭和38年法律第147号)第11条第1項各号及び第2項並びに第12条第2項及び第9項の規定に基づき、並びに同法を実施するため、中小企業診断士の登録及び試験に関する規則を次のように制定する。
第38条(試験の種類)
:試験を分けて、これを第一次試験及び第二次試験とする。
第39条(試験の実施及び公告)
1項:試験は、毎年度少なくとも一回行う。
(2項 略)
第40条(第一次試験)
:第一次試験は、中小企業診断士となるのに必要な学識を有するかどうかを判定することを目的とし、次の各号に掲げる科目について、多肢選択式又は短答式による筆記の方法により行う。
(各号 略)
第42条(第二次試験)
:第二次試験は、中小企業診断士となるのに必要な応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし、中小企業の診断及び助言に関する実務の事例並びに助言に関する能力について、短答式又は論文式による筆記及び口述の方法により行う。
第43条(第二次試験受験の要件)
1項:第二次試験は、当該試験の期日の属する年度又はその前年度に実施された第一次試験に合格した者に限り、受けることができる。ただし、第二次試験のうち口述の方法により行うものは、当該第二次試験のうち筆記の方法により行うものにおいて経済産業大臣…が相当と認める成績を得た者について行うものとする。
(2項及び8項 略)

 

年一回の試験です。法文上は「毎年度少なくとも一回」となっていますけど(上記規則39条1項)、実際上、年一です。
ちなみにこれ、実は、司法試験とか予備試験も同じ。

 

⑴ 1次試験

ア 概要

科目は次の7科目です。

試験の実施時期等は都度、官報で公告という建付けになっていますが、、

まぁ、概ね、1次は7~8月の夏真っ盛りの時期に、2日に分けて行われます(会場受験、今のところペーパー)。

僕は令和2年と4年に一次を受けたのですが、その時の受験票が↓です。



そうそう。思い出しました。令和2年、2月くらいにダイヤモンド・プリンセス号の事件があって、そこからコロナが凄いことになったじゃないですか。なので、この年だけ会場が国際展示場になったんですよ。広い会場で、しっかり三密を避けられるように。
「やるじゃん診断士協会!」って思った記憶があります。*13


さて、各科目の詳細等は別記事を書くつもりなので(あくまでつもり笑)そちらに譲るとして。

イ 免除制度等について

免除制度があります。他資格等保有による免除制度と、いわゆる科目合格による免除制度の2つがあります。

 

まず前者(他資格等保有による免除)について。AP(応用技術者試験)合格者が経営情報システム免除になることは以前のブログでも触れました。

黄色のマーカーを引っ張ったとおり、経済学・経済政策、財務・会計、経営法務、経営情報システムの4科目については、人により、一度も受験せずに一次合格することが可能になっています。
逆に言うと、残る3科目(企業経営理論、運営管理、中小企業経営・中小企業政策)はさにあらずで、受験者は全員受けることが求められています。だからなのか、これら3科目は、他と違って、試験時間が30分長い90分です。

人によっては、これら3科目を『重点科目』と呼ぶこともあるようです。

 

われら弁護士は、まず、経営法務が免除になります(緑のマーカー)。
それに加え、税理士法第三条云々って書いてありますが、それが以下。

弁護士資格あれば一応、税理士業務もできることになってるわけで、その根拠条文が↑ですね。で、それに伴って、診断士試験上も、税理士の先生方と同じ特典を享受できると。
よって、弁護士は、財務・会計も受けなくて良い、ということになります。

 

まあ確かに、法令上、税理士業務をすることが認められている人間が、受験資格上はそれとは異なる扱いを受けるってのは一貫しないわけで、「そらまぁ、そうなるか」、という感じではあります。
とはいえ、まぁ、いいんすか本当に?、とは思いますが笑*14


さて、もうひとつの制度、科目合格による免除について。
中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則41条2項です。

例えば僕が今年(令和6年)の一次試験で企業経営理論科目に『合格』したとして、来年・再来年*15にまた一次試験を受ける場合、僕が申請すれば、企業経営理論科目は受けなくてよくなる、という代物です。
で、科目に『合格』ってどういうことよ?というと、次のように定義されています。

一般社団法人中小企業診断協会HP中『試験に関するよくある質問(FAQ)』のページより)

要は100点満点中60点取れば当該科目合格、というわけです。

 

…ちなみに今回、試験の合格点とか科目合格制度の詳細とかを定めている根拠をいろいろ探したんですけど、どうにも見つかりません。
協会(一般社団法人中小企業診断協会)が定めた試験事務規程があるはずだから、おそらくその中で規定されているのだと思います。

ただ、その試験事務規程が見つかりません。
多分ですが、同規程をネット上で公開はしていないが、その代わり、そのエッセンス的なものをHPのFAQにまとめている、という形になってるんじゃないかな、と思います。
そういう次第で、今後、ちょいちょいこのFAQを引用します。たぶん。

 

さて、この科目合格に関して、僕は実は誤解をしました。

一次試験の『一部の科目に』合格した者に対しては、って書いてあるじゃないですか。ここの部分、どうやら、一次試験じたいに合格した者は違うからね、という趣旨を含んでいるらしいんですね。
つまり、科目合格制度は、あくまで一次試験不合格者を対象とした制度だ、ということ。

 

どういうことか(以下蛇足)。
まず、そもそも、(『科目合格』ではない)一次試験の合格基準は、次のとおりです。

なので、全科目で60点以上をとる必要はないわけです。数科目60点を切っても(40点さえ切らなければ)、その分を他科目で取り返してトータルで6割をキープすればOK。
で、いっかい一次に合格すると、その年の二次試験に進めるほか、次の年に二次受験する場合にも一次試験免除の特典を受けることができます。

 

さて。
僕、令和2年の一次に合格したとき、運営管理以外は6割を超えました。他方、同年の二次はダメ。
それで次の年(令和3年)、二次の受験申込みはしたんですが、諸事情で受験を見送りました。

この場合、さらに次の年(令和4年)の一次はどうなるか?というと、もっかい全科目(他資格保有に基づく免除が受けられる2科目以外は)受け直さないといけないわけですね。
なぜなら、科目合格制度は一次不合格者対象の特典であり、一次に合格した時点で効果が消滅するから。
しかし、僕、ここを誤解しました。

「僕、令和2年に6科目は科目合格したはずだから、今年まではその効力が活きてるはずだ、だから、受けるのは運営管理だけでいいはずだ」

と勘違いしたんですね*16

で、そういう体で受験申込をしたところ*17、↓の紙が送られてきました。

…試験日まで約1か月半のところで、まさかの4科目追加受験決定です笑
焦りました。まぁ、2年前に入れた知識でも意外と覚えてたので助かりましたけど。

 

ウ むかしのはなし

余談。
先日、実務補習を受けた際、指導員の先生から、

「むかしは一次の科目に助言理論っていう科目があってね、今はなくなっちゃったけど、実際に実務やる上では大切な考え方があるんだよ」

みたいな年寄りの昔話ありがたいお話を聞きました。
調べてみたら、平成12年から平成17年までは、

  • 「中小企業経営・中小企業政策」科目が「中小企業経営・中小企業政策・助言理論」という科目で、
  • さらに、「新規事業開発」という科目が別にあった

みたいですね。
協会のHP上では、わずかに↓のページが見つかりました。正解と配点が載せられてるくせに、問題文のページはありません笑

科目の見直しがされた理由は以下のようです。

『中小企業診断士制度の見直しについて』(平成17年9月中小企業庁経営支援課)p4より*18

ぶっちゃけ、科目数が多すぎるせいで受験を敬遠している層がいると踏んだのが実際的理由なようにも読めます笑
ただ、たしかに、助言理論の中核とされている(らしい)『傾聴』だとか、新規事業立ち上げの是非判断については、今の二次で前提とされ、あるいは現に問われてはいます。

 

問題、どんなんだったのか、見てみたいですけどね。
協会HP、平成18年より前の試験問題は載せてくれてないんですよね。
何でなんですかね。

 

⑵ 2次試験

一方の2次。論文式試験は、毎年10月に行われます。1日だけです。
僕は令和2年・4年・5年の3回受けました。最後の令和5年の受験票が↓です。

試験科目は4科目(各80分)。『中小企業の診断及び助言に関する実務の事例』Ⅰ~Ⅳ。長いくせになにも伝わらない笑
1次試験と違って、規則の条文でも特に内容(科目)は決められていません。

 

ただ、各事例において問われる事柄は固まってはいて、

  • 事例Ⅰは組織・人事に関する事柄
  • 事例Ⅱはマーケティング・流通に関する事柄
  • 事例Ⅲは生産・技術に関する事柄
  • 事例Ⅳは財務・会計に関する事柄

です。

事例Ⅰ~Ⅲはいずれも、1000~3000字くらいの企業概要(『与件文』と呼ばれています。)を読んで4~6つの設問(記述式)に答える、というもの。慣れないうちは、なんというか、どれも同じように何となーくフワッとした設問で、何を書いたらいいんだろうか…と悩まされたりします。
事例Ⅳだけは毛色が違って、計算をさせられます。ちなみに、時間が全然たりません。

 

合格基準は、1次と同じで、6割。

ただ、こっちは、受験生の出来に応じて配点とか採点基準とかをゴニョゴニョ操作してるはずなので、「6割」という数値にはあまり意味がありません。

 

なお、1次に合格したら翌年まで2次が受けられるのは前述のとおりですが、上記画像にわざわざ書かれてるとおり、論文に合格しても、口述を受けられるのはその年だけです。翌年はダメ。
口述はほとんど落ちないだけに、万が一落ちちゃったら悲惨ですね…。

その口述については、前の記事をご参照ください。
また、論述の詳細についても、別記事(予定)に譲ります。

 

 

3.統計情報

以下、協会HPからいくつか引用します。

⑴ 受験者数とか合格率とか

『申込者数・合格率等の推移』より)

  • 受験申込者数、令和3年以降は毎年約25,000人ですね。結構な数という印象です。令和2年→3年で人数がハネましたね(前年比2割強増加)。コロナで多くの中小企業が危機に瀕したのを目の当たりにして、それを支援できる資格の魅力が増した、ということですかね?
  • 一次の、実際に受験した人数を母数とした合格率は…年によってかなり違いますね。こんなバラついてんのか。近時は3割前後で高止まり、という感じでしょうか。

『申込者数・合格率等の推移』より)

  • 二次の受験申込者は、近時は毎年だいたい9,000人、といったところでしょうか。
  • 対する最終合格者数は約1,500人。ちなみに口述はほぼ落ちないから、これは筆記合格者数とニアリーイコール。
  • こっちの対受験者数合格率は安定してるんですよね。というか、そうなるように得点調整してるんだと思いますけど。18~19%。
  • で、一次の対受験者数合格率を30%として、試しにこれ(18~19%)と掛け合わせてみると*19、5.4%~5.7%という数値を得ます。難関寄りの国家資格としてはまぁこんなもんかな、という感じ。

 

⑵ どんな人が受けてるのかとか

以下は、現時点で最新の令和5年の資料からの引用です。

ア 一次

資料は『令和5年度 第一次試験』より。
なお、同年の一次は台風6号の影響で那覇地区の試験が取り止め→再試験となったところ、以下の資料では、那覇地区のデータは除外されています。

  • 女性、少なっ。
  • 受験申込者、ボリュームゾーンは30~40代か。体感には合致しますね。
  • 他方、50代もそれなりに(6,000人弱)いらっしゃる*20一方、それに比べると20代はやや少なめ(約3,500人)。
  • 申込者数と一次合格者数を比べてみて、パッと見、年齢によって合格率に有意な差があるようには見えないかな。若いほど勢いで受かりやすいとか高年齢者ほど年の功で受かりやすいとか、そういうのはないみたいですね。

  • 圧倒的に事業会社勤務の方が多数ですね。僕としては意外ですが、金融機関にお勤めの方がそこまで多いわけではない。
  • 自営は、申込者数でいうと、全部で約26,000人に対して1,300~1,400人、5%強か。僕的には、これも予想よりは少ないですね。

 

イ 二次

『令和5年度 第二次試験』より)

こちらは一次の資料の母数をそのまま小さくしたらこうなる、みたいな数値かな。特にコメントはありません。


4.試験後のはなし(診断士になるまで)

さて、ここから先は僕は一部未体験であり、実体験を伴わない机上調査ベースのお話も含みます。

⑴ 実務補習及び実務従事について

診断士は試験に合格して即、取得できる資格ではなく、一定期間、実務(っぽいもの)に携わる必要があります。

中小企業支援法11条(中小企業の経営診断の業務に従事する者の登録)
1項経済産業大臣は、中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言(以下単に「経営診断」という。)を受ける機会を確保するため、登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する者であつて次の各号のいずれかに該当するものに関する事項を登録する。
 1号 次条第一項の試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める実務の経験その他の条件に適合する者
(2号 略)
(2項 略)

中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則1条(中小企業診断士の登録の条件等)

1項柱書:中小企業支援法(昭和38年法律第147号。以下「法」という。)第11条第1項第1号の経済産業省令で定める条件は、同項の規定による登録(第二節から第四節を除いて以下単に「登録」という。)の申請の日前3年以内に中小企業診断士試験(法第12条第1項の試験をいう。以下単に「試験」という。)に合格し、かつ、合格した日から当該申請の日までの期間において、第1号に掲げるいずれか一以上の実務に従事した日数又は第2号に掲げるいずれか一以上の実務補習を受講した日数の合計が15日以上であることとする。
(各号 略)
(2項 略)

要するに、試験合格から3年以内に、合計15日以上、法所定の実務に従事するか(いわゆる実務従事)、実務補習なるものを受けろ、と。
ちなみに両者は排他的なものではないです。一部実務補習+一部実務従事も可。合計15日以上であればOK。

ア 実務補習について

多くの方はこれを受けます。協会のHPから申し込めば受けられますから、そういう意味では、楽と言えるのかもしれないです。
六人前後で一班となり、ベテラン診断士である指導員の下、実際の企業の診断を経験します。

 

この実務補習、今までは、1回5日間のコースになっていたのですが、それが来年から変わります。
1回8日か、ワンシーズンに一気に受ける場合のみ、8日+7日=15日コースのご提供となります。

『令和6年度からの中小企業診断士実務補習に関するお知らせ』より)

僕はこの7月に、5日間コースを一回だけ経験したところですが、とてもとてもとてもとても、しんどかったです。
詳細は別記事で書く予定(あくまで予定)ですが概要だけ書くと…

  • 金曜:都内会議室に集合して午前中打ち合わせ、午後に企業訪問して社長面談・ヒアリング
  • 土曜:ヒアリングの結果やら資料やらをもとにSWOT分析等して診断報告書の全体像共有
  • 日曜~土曜:自主作業という一人旅
  • 日曜:同時点での検討結果を持ち寄って内容擦り合わせ、執筆
  • 月曜=海の日:再び内容を擦り合わせて微調整、各パート合体して書式を整え報告書完成、プレゼンリハーサル
  • 火曜:プレゼン、3回目の人は修了式あり、反省会(打ち上げ)

という感じ。要するに、現実に拘束される5日の間は対外的なイベント(社長ヒアリング等)と班内の他メンバーとの調整でいっぱいいっぱいで、自分の分の報告書を起案する時間は相当限定されていました。
僕の班、指導員の先生が入念なタイプで一定量を事前準備として前出ししてくださったんですけどね。それでも5日間はパッツパツでした。
ちなみに間に挟まる自主作業期間ですが、僕の班は、この間にも、①月曜に社長に追加ヒアリング、②木曜にメンバー間の中間報告が入りました。要は、執筆のための材料が先立つ金曜・土曜で全て出揃った状態で同期間を起案に充てられるわけでもないです。
睡眠時間を削って作業せざるを得なかったですね。日曜~海の日は久しぶりの徹夜でした。


ことほど左様に、このネット上では、実務補習はとってもしんどいよ、という記事がいっぱいいっぱい見つかることと思います。要は、試験合格者の共通認識です。
なので、今回のコース日数変更は、この無茶な日程の見直し、というか緩和に主眼があるのではないか、と言われています。

では実際問題、日数延長で緩和が実現されるのかについては、肯定説も否定説もあります。
普通に考えれば多少はマシになるような気もしますが、長くなればなったでやらされることが増えるだけではないのか、という疑念もよく分かります。だって、そもそもが無茶な日程で、本来せにゃならんことを削ってるわけですもん。僕の実感としては、社長への追加インタビューなんて絶対必要ですよ。それが5日間の中に組み込まれてない方がおかしい。
さて、どうなりますかね。

 

…という、とってもしんどい実務補習ですが、それと同時に、それでも一回は受けておけ、とも言われています。
フルスケールでの企業診断の方法論をベテラン診断士の先生から教えてもらえる機会なんて、これを除いて二度とないから。
また、一緒に班を組んだチームメイトは、強い絆で結ばれた貴重な診断士仲間になり得るから。
実際、こんだけしんどかった言ってる僕も、受けて良かったと思ってますし。めちゃくちゃ充実した半月でした。
終わってみれば一瞬の夢だったように感じますし*21、既に早くも、今秋、指導員の先生も交えて同窓会(ただの飲み会)することが決まっています。

 

以上のような次第で、診断士試験合格者の多くが、この実務補習の受講を申し込みます。が、しかし。
まず、上の画像にあるとおり、実務補習の実施時期は、2月と7~9月です。通年で開催されてるわけではなく、受講の機会は年二回に限られています。

【2月の実務補習】

まず、これ、いつ申し込むかというと、実は、筆記の合格発表の次の日です。つまりは最終合格前。*22
で、当該年度の筆記合格者よりも先に、既に受講資格を得ている前年度以前の最終合格者向け募集がスタートします。したがって、当該年度の筆記合格者は、既に一定数が申し込まれてパイが削られた残りを享受できるにすぎません。
そこに、筆記に合格して「よっしゃ!早く資格とって名刺に書いてやるわ!」と意気込んだ受験生の応募が殺到します。
なので、募集開始からものの数分で枠が埋まってしまうそうです。

【7~9月の実務補習】

対して、こちらはそこまで、必死こいて申し込まなくても大丈夫です。応募開始は、たしか5月くらいだったと思います。
ただし、2月の申込みではそれなりの人があぶれ、その方々が夏の応募に雪崩れ込む上、近時は合格者も増加傾向ですから、そうそうのんびりできるわけではありません。
こちらも、30分とかそこらで埋まってしまう、というふうに聞いています。
応募開始は平日の朝10時とかだったはずですから、会社勤めの方は、その時刻、プライベートでネットにアクセスできる手筈を整えておく必要があります。*23

 

実務補習は、そんな感じです。
ちなみに、気になるお値段は…

『令和6年度からの中小企業診断士実務補習に関するお知らせ』より)


イ 実務従事

対する実務従事ですが、正直、僕はよく分かっていません。
協会がオフィシャルに提供する合格者向けの半・模擬実務経験の場が実務補習なのに対し、そうではない実務経験の場全般を実務従事と呼んでいる、くらいの感覚でいます。
法文(中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則1条1項1号)上は、こんなん↓です。

一方、僕の現実的な認識としては、

  1. 主に、実務従事の機会を提供する各種民間団体が募集しているやつに申し込む
  2. 自分で知り合いの社長さん/個人事業主に頼んで、実務従事をやらせてもらい、サイン&ハンコをもらうかの二択で、
  3. その他、一応、合格後であれば資格取得前でも協会には入れるところ、入った協会で伝手ができれば、協会を通じた実務従事の機会をもらえることもある、

という感じ。
法文と見比べると、たぶん、①がハ、②がニ、③がイ(&ロ)と対応するのかな、と思います*24

 

冒頭書いたとおり、僕は今、タキプロという受験生支援団体に所属しているのですが、そこで知り合った方々には、そこそこ、実務従事を利用したという方がいらっしゃるんですよね。これ、僕的には意外でした。もっと少数派なのかと思っていました。
で、もともと僕は実務補習一本で15日分完遂するつもりだったのですが、ちょっと考えて予定を変更し、

  • 10日分(5日分×2)は実務補習やって
  • 残る5日分は、上記②の方法で実務従事をする

ことにしました。
実務補習、きついって聞いてましたし。2回やれば十分かな*25、お金ももったいないし、一応伝手もあるし、などと考えて。

実務従事をした場合、それを証明する書面を提出する必要があります。
このサイトの「2」のとこにあるやつを提出するみたいですね。僕の場合(上記②の場合)は様式19かな。


⑵ その他

ちょろっと上で書きましたが、各都道府県協会には、合格後であれば診断士未登録でも入れます。
入れば、うまくいけば、実務従事の機会ももらえるかもしれないし、早めに入っておけば、その後の仕事にも繋がりやすいのかもしれないです。
ただ他方、入る以上はおそらく、弁護士会で言うところの会務みたいなものもあるんだと思います。なので僕は、入るなら診断士の肩書で仕事もできる状態で入ろうと考え、保留にしています。*26
ちなみに都内での活動をお考えの方の場合、春と秋とで協会主催の説明会みたいなもの(Spring Forum・Autumn Forum)があります。
なので、まずはそこに行ってみて、それから考えるというのも手かと。

 

他方、登録前に協会に入らず、かつ、仮に、夏まで実務補習開催を待つとすると、それはそれで逆に時間がもったいない。
僕はそう感じたので、タキプロさんに入りました。
けっこう、これはお勧めですよ。登録前から人脈が広がりますし。知り合った方々から実務補習とか実務従事とかの話も聞けますしね。
ただ、他団体さんの多くは参加締切がそこそこ早めだったりするようですから、最低限、筆記合格前から、SNSで複数団体をフォローだけでもしておいた方がいいかもしれません。*27

 

 

 

 

 

 

 

*1:僕、司法修習でも恩師に巡り合えましたから、この種の運は持ってるのかもしれません。

*2:70人とか言ってたような。

*3:中小企業ならば特に役に立つ、ということは言えるかもしれませんが。あ、1次の中小企業経営/政策は例外です。

*4:カリキュラムと試験内容とで類似性も認められるらしいです。しらんけど。

*5:東京の場合は支部や区会。

*6:ちなみにそう言ってた人は某コンサルさんでしたが、仮に、診断士資格関連業務が中小企業庁から経産省に戻されて、協会が(多少廉価で)大企業さんのお仕事も請け負うようになったとしたら、それに一番文句言うのはおたくらなんちゃうの?、などと思わないでもない。

*7:弁護士法72条

*8:2年以下の懲役又は300万円以下の罰金。弁護士法77条3号、同法72条。

*9:あんまコレ言い過ぎるとマリーアントワネット発言にもなりかねないので自重しますが。

*10:他の資格の例で言うと、「情報処理安全確保支援士」とかがありますね。

*11:実務補習を経て尚更そう思います。

*12:なので、今パッと調べられる試験関係の統計情報などは同年以降の分しかない。

*13:「それにひきかえ我らが司法試験委員会ときたら…」と情けなくなった記憶もね…本っっっ当に何の手も打たなかったですからねあの人たち。

*14:中村真先生もお書きのとおり。

*15:条文上は、「合格した第一次試験の行われた年度の初めから三年以内に第一次試験を受ける場合」です。これを本文中の例に当てはめると、「合格した第一次試験の行われた年度の初め」=令和6年4月1日で、この日「から3年以内に第一次試験を受ける場合」というのは、令和7年夏に一次を受ける場合と、令和8年夏に一次を受ける場合です。

*16:そういえば、令和2年の一次受験後、協会から送られてきたのは一次の合格証(兼二次受験票)だけで、各科目の点数をオフィシャルな形で教えてもらったわけではありませんでした。つまり、「科目合格してるはずだ」というのも自己採点に基づく推測でしかないわけで、冷静に考えれば、それで科目合格の特典が受けられるわけがなかったんですけどね。

*17:正確に言えば(超たまたま)、経営法務と財務・会計は他資格保有に基づく免除申請をして、経済学・経済政策、企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の4科目は科目合格に基づく免除申請をしました。これ、今考えるとホントに危なかったわけで、上記6科目ぜんぶを科目合格に基づく免除申請してたら、経営法務と財務・会計まで無駄に受け直さないといけないところでした…。

*18:たった今この資料を読んで知ったところなのですが、このときの制度見直し、結構大きなやつだったんですね。科目合格制度なんかもこのとき導入されたようで。

*19:二次の受験者には前年の一次合格者も含まれるので、厳密に考えれば、一次と二次の対受験者数合格率を掛け合わせるのは不正確というかナンセンスなんですが、そこはまあ試験イメージを大掴みに捉えるための試算ということでご容赦ください。

*20:セカンドキャリア開拓を考えた際に魅力的に映るみたいです。ちなみに僕の実務補習一周目の班、6名中3名の方が50代でした。

*21:短期間のうちに濃密で充実したスキルに触れたという意味で、アヤコ姐さん(@スラムダンク)のセリフ、「この4ヶ月がまるで夢だったかのように……」という一節が、とても身に沁みます。僕はまだちゃんと、学んだことを覚えていられているのだろうか。

*22:僕は、そのことも知らなかったし、そもそも合格発表日じたいも失念していたので、当然、申込みチャレンジすらしません(できません)でした。

*23:ちなみに受験番号とかを入力する必要があったはずですから、受験票の現物なり番号の手控えなりが必要です。

*24:なお、ホは、近時に診断対象が中小企業支援法上の中小企業から若干拡大した(お医者さんとかも含まれるようになった)のに対応して設けられた条文のはず。ヘは読んで明らかなとおり、海外での活動も一応はアリだよ、というものですね。

*25:ここは判断が分かれるところだと思います。実務補習に複数回申し込む場合、できるだけではありますが、診断先の業種がかぶらないように協会が配慮してくれるらしいです。で、例えば、製造業の診断と小売業の診断とではおそらく趣が全然違うはずだから、「何回も実務補習やることに意味がない」わけでは全然ないはずです。しかも、指導員の先生によってもやり方は全然違うようですから尚更。結局はコスパ・タイパ・労力とのバランスになるんだと思います。

*26:ちなみに、協会から振られる仕事を個人事業主として請ける場合、インボイス登録が必要だ、という話を聞いています。

*27:タキプロはたぶん一番遅いです。というか、今でも、追加参加希望者を受け入れているくらいです笑